DO(溶存酸素)の測定方法と注意点
浄化槽のふたを開けたとき、私たちは水の色や匂いに目を向けがちです。けれど、その奥では、目に見えない“呼吸”が絶えず続いています。
微生物が酸素を取り込み、水を浄めるという営み。その状態を静かに映し出すのが、DO(溶存酸素)です。DOは、生物処理に関与する微生物の活性や、水中への酸素の溶解量に直接関係し、浄化槽の処理機能を評価するうえで極めて重要な指標となります。
浄化槽は、微生物と人の協働によって成り立つ、小さな生態系です。その中心にあるのが送風機(ブロワ)です。電気の力で空気を送り込み、好気性微生物による汚濁物質の分解を支えています。
DO計は、その支えが適切に届いているかを確認するための道具です。数値が示すのは単なるデータではありません。酸素供給量と、微生物による酸素消費量とのバランス──つまり、「今、この槽で呼吸は続いているか」という問いへの答えなのです。
停電やブレーカーの遮断によってブロワが停止すると、酸素の供給は途絶えます。その結果、DO値は急激に低下し、微生物は本来の力を発揮できなくなります。特に硝化細菌は増殖速度が遅く、溶存酸素が不足すると、その働きは大きく阻害されます。
見た目には変化がなくとも、槽内では確実に負荷が蓄積し、悪臭の原因となる硫化水素などが発生するリスクが高まっていきます。だからこそ、事実を正確に測定し、関係者と共有することが、技術上の基準に基づいた公平で公正な管理の第一歩となります。
DO測定は特別な作業ではありませんが、正確な値を得るためにはいくつかの注意点があります。現場では迅速に測定できる隔膜電極法が一般的ですが、測定前には必ずスパン校正やゼロ校正を行うことが欠かせません。また、電極部に水流を与えるように動かさなければ、正しい値は得られません。
さらに、ばっ気槽内では場所によってDO濃度に差が生じるため、複数箇所で測定し、記録として残すことが重要です。手を抜くために手を抜かない──現場での丁寧な測定が、結果として大きな機能障害を未然に防ぎます。
浄化とは、汚れを除く行為であり、共生とは、それぞれの役割を尊重する姿勢です。公共用水域の水質保全という目的を果たすため、微生物の呼吸を守ることは、水を守り、地域の暮らしを守ることにつながります。
変わらない安心を保つために、測り、伝え、整え続ける。その静かな循環こそが、未来への責任なのです。
(たとえ話)
浄化槽におけるDO測定は、いわば**入院患者の血中酸素濃度を測る「パルスオキシメーター」**のようなものです。
数値が下がれば、すぐに異常を察知し、酸素補給──つまりブロワの点検や調整を行う。そうすることで、浄化槽という「生き物」が健やかに水を浄め続けられるよう、私たちは日々、その小さな鼓動を見守っているのです。